介護の基本
CHAPTER 01
介護における人間の尊厳と自立

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Lesson 01

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尊厳を支える介護
介護職は利用者の尊厳を守り、その人らしい生活ができるよう支援することが大切です。
人間の尊厳と人権尊重
介護職は利用者の尊厳を守り、QOLの向上を目指す重要な役割があります。
生活は利用者主体
生活は一人ひとり異なり、介護が必要でも利用者自身が主体です。介護者の価値観で介護をしてはいけません。
その人らしい生活の支援
利用者の生活を尊重し、その人の好みや習慣に合わせた支援を行うことで、その人らしい生活ができるよう援助します。

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生活の質(QOL)
QOLとは
生活の質(QOL)は、日々の暮らしの満足感や幸せ、生きがいなど、心の豊かさを表します。
QOLの向上
介護では、体のケアだけでなく、利用者の心の豊かさも大切にします。
個別性の尊重
QOLは人によって違います。利用者それぞれの大切にしていることを理解し尊重しましょう。

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ノーマライゼーション
ノーマライゼーションとは
障害のある人もない人も、同じように普通の生活ができる社会を目指す考え方です。
みんなで支え合う社会
障害があってもなくても、お互いに助け合いながら、自分らしく生活できる社会のことです。
バリアをなくす
階段などの物理的な障壁だけでなく、偏見などの心の壁も取り除くことが大切です。

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💡 介護のことば - Today's Words 01
介護の現場でよく使う大切な言葉を覚えましょう。日本語と英語の両方を知っておくと便利です。

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💡 介護のことば - Today's Words 02

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💡 介護のことば - Today's Words 03
これらの言葉は利用者の日常生活支援やQOL向上に関わる重要な概念です。日々の介護で意識しましょう。

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Lesson 02

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介護における自立とは
自立支援は介護の基本理念の一つです
自己決定の尊重
利用者が自分の生活について選択し決定することを大切にします。
身体的・精神的自立
単に身体機能だけでなく、自分の価値観に基づいた選択も自立の重要な要素です。
自立支援の姿勢
過剰な介護は避け、できることは本人に任せ、自信と尊厳を守ります。
自立支援は「してあげる介護」から「共に歩む介護」への転換です。

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自立を支援する
利用者ができることを大切にし、その人に合った支援をします。
食事の支援
自分で食べられる部分は自分でしてもらい、必要な時だけ手伝います。
着替えの支援
時間がかかっても自分で着替えてもらい、できた喜びを感じてもらいます。
移動の支援
安全に気をつけながら自分の力で動いてもらい、体の機能を保ちます。
選ぶことの支援
いくつかの選択肢を示し、自分で選んでもらうことを大切にします。
利用者の好みを大切にし、できることを増やして心と体の自立を助けます。

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生活の理解
生活の多様性
国によって生活の仕方は違います。人の考えや好みで暮らし方も変わります。
日常生活の要素
起きる、着替える、顔を洗う、食事、トイレ、お風呂、楽しむこと、眠ることが生活の基本です。人によって生活リズムは違います。
生活に影響するもの
健康状態、家事能力、住居、家族、地域との関わりが生活に影響します。
個別性の尊重
介護職は一人ひとりの生活習慣や大切なことを理解し、その人らしい暮らしを手伝います。

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介護職が行う生活の支援
利用者を知ることが大切
利用者の生活習慣を知り、その人らしい暮らしを助けます。
やる気を高める
介護が必要になると気持ちが沈みがちです。介護職は利用者のやる気を高めます。
安全を守る
介護職はいつも利用者の安全に気をつけます。

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💡介護のことば - Today's Words 04
介護の現場でよく使う大切な言葉を覚えましょう。日本語と英語の両方を知っておくと便利です。

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💡介護のことば - Today's Words 05

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💡介護のことば - Today's Words 06

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介護の基本
CHAPTER 02
介護職の役割と職業倫理

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Lesson 03

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介護職の役割
毎日の生活を助ける
利用者の状態が悪化しないように、日常生活をサポートします。
変化に気づく
利用者の様子をよく見て、小さな変化も見逃さないようにします。
他の専門家と協力する
様々な専門家と一緒に働き、利用者が望む生活ができるよう手伝います。

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介護職の職業倫理
① プライバシーの配慮
入浴や排泄の時、利用者は体を見せることになります。介護職は利用者が恥ずかしくないように、プライバシーを守ることが大切です。
② 秘密保持
介護職は良い介護をするために、利用者の情報を知る必要があります。でも、利用者の個人情報(年齢、住所、病歴など)を本人の許可なく他の人に話してはいけません。
インターネットやSNSで、利用者の許可なく情報を公開することも禁止されています。

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介護職の職業倫理
③ 身体拘束の禁止
身体拘束とは
身体拘束とは、利用者の体を自由に動かせなくすることです。自由に動く権利はとても大切です。
身体拘束の悪い影響
身体拘束をすると、体が弱くなったり、認知症が悪くなったりします。また、心が傷つき、自分を大切に思う気持ちも失われます。
身体拘束の例
ベッドに縛る、車いすから立てないようにする、手袋型の抑制具をつけるなどが身体拘束です。これらは基本的にしてはいけません。

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身体拘束となる行為の例
1
ベッドでの拘束
体を固定するベルトを使う、ベッドの周りを柵で囲む、手袋をはめて動きを制限するなど
2
車いすでの拘束
車いすで体や手足をひもで縛る、テーブルをつけて立てないようにするなど
3
その他の制限
薬を使いすぎて眠らせる、自分で開けられない部屋に閉じ込めるなど
身体拘束は、人の尊厳を傷つけ、体の機能が弱くなったり、心が苦しくなったりします。基本的にしてはいけません。

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介護職の職業倫理
④ 虐待の禁止
虐待とは、利用者の人権を侵害することです。
身体的虐待
叩いたり、押したり、無理やり食事を与えるなどの行為
介護放棄(ネグレクト)
必要な介護や世話を提供しないこと
心理的虐待
怒鳴ったり、無視したり、人格を否定する言動
経済的虐待
本人の財産を不当に使用したり、管理を怠ること
介護職は、どのような状況でも虐待をしてはいけません。利用者の尊厳を守ることが私たちの責任です。

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虐待の5類型
身体的虐待
叩く、つねる、無理やり食事を口に入れる、身体拘束など
心理的虐待
怒鳴る、無視する、子ども扱いする、威圧的な態度をとるなど
性的虐待
性的な行為を強要する、わいせつな行為をするなど
経済的虐待
本人の財産を勝手に使う、年金や預貯金を渡さないなど
介護・世話の放棄・放任
食事や水分を与えない、必要な介護サービスを受けさせないなど

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💡介護のことば - Today's Words 07

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💡介護のことば - Today's Words 08

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💡介護のことば - Today's Words 09

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Lesson 04

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他職種連携/チームアプローチ
多職種連携の重要性
介護職以外にも各種の専門職が、それぞれの専門性を活かして、利用者にチームで関わっています。
情報共有
利用者の状態や変化について、チーム内で適切に情報を共有することが重要です。
共通目標の設定
利用者の望む生活の実現に向けて、チーム全体で共通の目標を持つことが大切です。
専門性の尊重
各職種の専門性を理解し、尊重し合うことでより良いケアが提供できます。

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他の職種の役割と機能
1
医療行為を行う専門職
医師や看護師は医療行為を担当します。これは医学的知識に基づく行為です。介護職は医療行為はできません。
  1. 医師:病気を診断し治療します
  1. 看護師:医師の指示で療養の世話や診療の補助をします
2
リハビリテーションを行う専門職
機能回復の訓練を担当する専門職がいます。
  1. 理学療法士(PT):歩行など基本動作の訓練をします
  1. 作業療法士(OT):日常生活動作の訓練をします
  1. 言語聴覚士(ST):話すことや飲み込み(嚥下)の訓練をします

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食事に関する専門職
管理栄養士
管理栄養士は、栄養・食事に関する専門職です。食事形態やカロリーなどに配慮しなければならない利用者に合った献立を作ります。
栄養バランスの管理
栄養バランスを考えた献立を作ります。利用者の健康状態や嗜好に合わせた食事を提供します。
食事形態の調整
嚥下機能に合わせて、普通食、きざみ食、ミキサー食など適切な食事形態を選択します。

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💡介護のことば - Today's Words 10

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💡介護のことば - Today's Words11

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介護の基本
CHAPTER 03
介護における安全の確保とリスクマネジメント

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Lesson 05

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福祉サービスの相談・調整を行う 専門職
連絡調整の役割
利用者からの相談や家族との連絡調整を行います
① 介護支援専門員 (ケアマネジャー)
利用者が適切な介護サービスを受けられるよう、ケアプランを作成し調整します
② 社会福祉士
福祉に関する相談援助を行い、適切な社会資源につなげる役割を担います
③ 相談支援専門員
障害福祉サービスの利用計画を作成し、地域生活を支援します

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介護サービスの種類
訪問系サービス
訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなど
利用者の自宅で生活を続けながら必要なサービスを受けることができます。
通所系サービス
通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)など
日中、施設に通って食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けることができます。
入所系サービス
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など
施設に入所して、24時間体制で介護サービスを受けることができます。

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介護過程の基本的な流れ
介護過程では、利用者の言葉・表情・行動をよく見て、その人らしさを大切にしながら、自分でできることを増やし、生活の質を良くすることが大切です。
介護過程の基本サイクル
アセスメント
利用者の状態や生活環境を観察し、本当に必要なことと問題点を理解します
計画づくり
見つけた問題に対して、具体的な目標と支援の方法を決めます
実行
計画に沿って、一人ひとりに合った介護を行います
振り返り
介護の効果を確認し、必要なら計画を見直して良くします

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介護過程の実践ステップ
情報収集
利用者の身体・心の状態、生活歴、人間関係、希望などの情報を集めます
課題分析
集めた情報を整理し、利用者の表面的・潜在的なニーズと課題を見つけます
目標設定
利用者の意向を大切にしながら、具体的な短期・長期目標を一緒に決めます
計画作成
目標達成のための支援方法、頻度、担当者をはっきりと決めます
実施
計画に沿って介護サービスを提供し、経過を記録します
評価
目標の達成度とサービスの質を評価し、必要なら計画を見直します

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転倒・転落防止の具体策
利用者の状態観察
体調や気分の変化に注意し、いつもと違う様子がないか観察します。
環境整備
床が濡れていると滑りやすいです。コードは躓きの原因になります。
福祉用具の点検
車いすやベッド柵などの福祉用具は使用前に必ず点検します。
適切な履物の選択
スリッパではなく、かかとのある靴や滑り止め付きの靴下を使用します。

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💡介護のことば - Today's Words12

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Lesson 06

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感染症と対策
感染症の基礎知識
感染症は、病原体などがからだに入り、いろいろな症状を起こす病気です。
高齢者の感染リスク
集団で生活している利用者は、感染症にかかりやすいです。
予防の重要性
介護職一人ひとりが感染症に対する知識を持つことが必要です。

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病原体の種類
ウイルス
インフルエンザ、ノロウイルス、新型コロナウイルスなど
細菌
O157、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌など
真菌
カンジダ、白癬菌(水虫の原因)など
寄生虫
アニサキス、回虫、ダニなど

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観察の視点
感染症の早期発見
感染症対策では、利用者をよく見ることが大切です。熱、吐き気、下痢、お腹の痛み、発疹、顔色の悪さなどがあれば、すぐに医療スタッフに伝えましょう。
観察のポイント
  • 体温(いつもより高くないか)
  • 食欲(いつもより食べていないか)
  • 排泄(下痢や便秘はないか)
  • 皮膚(発疹や赤みはないか)
  • 呼吸(咳や痰が増えていないか)
  • 様子(いつもと違うところはないか)

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感染症の3要素と対策の原則
感染源
病原体を持っている人や物
感染経路
病原体が伝わる道筋
宿主
感染を受ける人(動物など)
感染症対策の原則は連鎖を断ち切ることです。感染対策の基本として、次の3つがあります。
①持ち込まない ②持ち出さない ③広げない

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標準予防策 (スタンダード・プリコーション)

1

2

3

1
基本的な考え方
患者の血液、体液、分泌物、排泄物などは、すべて感染の可能性があるものとして扱います。
2
具体的な対策
血液や体液に素手で触れないこと。必ず手袋を使い、介護後は手洗いをします。
3
使用する物品
手袋、マスク、エプロン、ゴーグルなどを必要に応じて使います。

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Lesson 07

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使い捨て手袋の交換方法
  • 作業ごとに手袋を交換する(例:利用者ごと、作業内容ごと)
  • 破れたり、汚れたりした場合はすぐに交換
  • 手袋を外すときは、表面に触れないように内側を持って裏返しながら外す
  • 外した手袋は決められた場所に捨てる
  • 外したあとは、必ず手指消毒または手洗いをする
  • 手袋の使い回しは禁止! 必ず1回のケアごとに新しい手袋を使用する

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手洗いの方法と注意点
手洗いの種類
手洗いには水と石鹸を使う方法と、アルコール消毒液を使う方法があります。
特に洗い残しが多いのは、指先、指の間、手の甲、親指の付け根、手首です。
水と石鹸での手洗い手順
  1. 手を水で濡らし、石鹸を取ります
  1. 手のひらをこすります
  1. 手の甲を指で洗います
  1. 指先と爪の間をしっかり洗います
  1. 親指と手のひらをねじって洗います
  1. 手首も洗います
  1. 水でよくすすぎ、きれいなタオルで拭きます

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介護職自身の健康管理
健康管理の重要性
介護職は自分の健康を守る必要があります。健康でなければ、良い介護はできません。
健康維持のポイント
規則正しい生活、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理が大切です。
メンタルヘルスケア
介護の仕事を続けるには、こころの健康も大切です。不安や悩みは一人で抱え込まないようにしましょう。

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腰痛予防
姿勢と腰痛
介護の仕事では腰を痛めやすいので気をつけましょう。正しい知識と実践で腰痛を防げます。
体の使い方の工夫
利用者を動かす時は、利用者の安全と自分の体への負担を減らすことが大切です。
ボディメカニクスとは、体を動かす時の筋肉や骨の使い方のことです。この原則を使うと、少ない力で安全に介護ができます。

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Lesson 08

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ボディメカニクスの原則
体の使い方の基本
  1. 足を広く開き、腰を低く保ちます
  1. 動かすものに近づきます
  1. 腕より太ももなど大きな筋肉を使います
  1. 利用者の体をコンパクトにまとめます
  1. 「押す」より「引く」動作を選びます
  1. 重心は横方向に動かします
  1. 体をねじらず、足は移動方向に向けます
  1. てこの原理を活用します

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腰痛予防の実践
利用者の能力の活用
利用者の状態をよく確認し、利用者自身の力をできるだけ活用しましょう。
福祉用具の活用
リフトやスライディングボードなどの福祉用具を適切に使用しましょう。
ボディメカニクスの活用
正しい体の使い方(ボディメカニクス)を意識して動きましょう。
生活習慣の見直し
  • 適度な運動
  • バランスの取れた栄養
  • 十分な休息 これらが腰痛予防には大切です。

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こころの健康管理
規則正しい食事
毎日同じ時間に、バランスの良い食事をとりましょう。これがこころの安定につながります。
コミュニケーション
悩みがあったら、誰かに話しましょう。一人で問題を抱えないことが大切です。
ストレス発散
運動や好きなことをして気分転換しましょう。自分に合った方法を見つけることが大事です。
十分な睡眠
しっかり眠ることで心と体が休まります。睡眠時間をしっかり確保しましょう。

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こころの健康管理
介護の仕事を続けるには、自分のこころの健康が大切です。不安や悩みは一人で抱えず、周りの人に話しましょう。毎日の生活リズムを整えることで、こころとからだを健康に保てます。
食事の大切さ
決まった時間に、栄養バランスの良い食事をとりましょう。規則正しい食事はこころを安定させます。
話をする大切さ
先輩や仲間とよく話し、困ったときは相談しましょう。一人で悩まないことが大切です。
気分転換の方法
自分に合った気分転換の方法を見つけましょう。運動や好きなことをする時間も大事です。

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防災対策
災害はいつも突然起きます。地震、台風、火事などに備えて、日頃から準備しておきましょう。
介護の現場では、利用者の安全が一番大切です。落ち着いて対応できるよう、毎日意識して準備しましょう。

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介護の基本を学んで
介護は人の尊厳を守り、自立を支援する大切な仕事です。利用者の生活の質を高め、専門職として倫理を守りながら働きましょう。
学んだ知識を活かし、これからの実践に繋げていきましょう。

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💡介護のことば - Today's Words23

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💡介護のことば - Today's Words24

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💡介護のことば - Today's Words25

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